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伯耆の國の御伽草子

お気楽気ままな高齢者のグダグダ噺

東京というところ-5(遠い記憶の中に)

 おはようございます。

 

 

 いくら神村少年が変態、失礼、元へ、変人でも、急に

「俺、一度、日本の首都をみておきたい」などどいう訳がございません。神村少年はどのような作戦に出たかといいますと、まず卒業前でも入れる、適当な専門学校を探してきました。

 

 もちろん東京にある学校です。そして神村少年は母親に、もう少し勉強がしたいと申し出たのでありました。

 

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「あのね、焦っても仕方がないと思うんだ。で、俺、もう少し勉強がしてみたいと思っているんだ」

「もう少し勉強がしたいって、何の勉強がしたいんだい?」

「デザインの勉強がしたいんだけど……」

「デザイン?お前、洋服でもデザインするのかい?」

「違うよ」

「じゃあ、何のデザインをしたいんだい」

「インテリアデザインだよ」

 

「何だい?そのインテリ何とかというのは?お前にはインテリという言葉は似合わないよ」

「インテリじゃないよ。インテリアだよ。インテリアデザインというのは、部屋のデザインをしたりすることだよ」

「部屋のデザイン?そんなものが仕事になるのかい」

「一応、建築の一部だからね、仕事はたくさんあるみたいだよ」

 

「今からでも入れる学校なんてあるのかい?」

「東京に、〇〇デザイン専門学校ってあるんだ。そこなら今からでも間に合う」

「東京!何も東京まで行かなくても、大阪や、探したら広島にもあるんじゃないのかい?」

「いや、〇〇デザイン専門学校がいいと思うんだ。〇〇デザイン専門学校を出ると、二級建築士の受験資格もとれるんだ。それに〇〇デザイン専門学校は、卒業したら、短大卒と同様の学歴になるらしいんだ」

 

「それにしても、何も東京じゃなくてもいいんじゃないのかい?それに入学金や学費も高いんだろ。下宿したら、毎月の生活費もかかるじゃないか?」

「母さんには、入学金と学費、それから下宿代を出してほしんだ。生活費は俺が東京でアルバイトをして何とかするよ」

 

「でもねぇ……」

 

 神村少年は必死に母親を説得するのですが、なかなか承知をしてくれません。そこで神村少年は、遠く未来の希望をみつるような眼をして、天井の節穴を見つめながら

 

「学校を卒業したら、地元で就職する。仕事をしだしたら、きっともうどこにも行けなくなる。その前に、俺は、日本の首都、そう一度、日本の首都の東京というところをみて、日本が本当はどんな国なのか?日本の将来はどうなっていくのかを、この目で見て考えてみたいんだよ。それが出来るのは今しかないと思うんだ」

 

と母親の前で熱弁をふるったのでした。

 

 日本の将来を考えたいという、ちょっと考えれば、

 

何を言ってんだいこの馬鹿が……

 

となるような話を、神村少年の母親は、まあうちの息子は立派なことと目を潤ませながら見つめて、東京行を許してくれたのでした。

 

ということで、神村少年の目論みは成功して、東京へ行くことになったのでありますが、

 

専門学校はあくまでも口実でありまして、将来は建築家になりたいなんて、ちっとも、そう、指の先ほども考えてはおらず、東京へ行けば、憧れの三畳一間生活が、

 

そしてあの同棲生活が待っていると考えていたのであります。

 

本当におバカさんでした。

 

 前にも書きましたが、神村少年の青春の門を開いたのは『南こうせつかぐや姫』でありましたが、それは正面玄関でありまして、青春の裏口の門を開いたものもありました。

 

 それはロックと言われる、そう、それもハードロックと言われる外国の曲でありました。

 

 私は音楽の専門家ではありませんので、詳しくは語ることは出来ませんが、その頃、私はフォークソングとは別にこのハードロックと言われる世界にも憧れを持つようになったのであります。

 

 まず私の前に登場したのは、おそらく皆さんご存知の『ディープパープル』でありました。

 

 あの『スモークオンザウォーター』のイントロにノックアウトされたのでありました。

 

 それから『エリッククラプトン』の渋い髭面に恋をし、『レッド、ツェッペリン』のギターサウンドに脳天を勝ち割られて、天国への階段を駆け上ったのでありました。

 

 そんな中でも、神村少年を夢中にさせたのは、おそらく皆さんあまりご存じないかとは思いますが『ウィッシュボーンアッシュ』というイギリスのロックバンドでありました。

 

 神村少年は『ウィッシュボーンアッシュ』という百の眼を持った巨人の登場に、ロックの王様がやって来たように思い、剣を捨てて地面ひれ伏したのでありました。神村少年は東京に行けば、自分も輝くロックの星になれるのでないかと思うようになったのであります。

 

 そしてなんと自分のことを『アッシュ』と名乗るようになったのであります。